ふぁーみんぐ通信07年1月号
      なぜ「麻」にこだわっているのか?〜麻の必要性の巻〜


●麻をテーマにして早7年目へ。。。

2000年11月に「ヘンプがわかる55の質問」を自費出版してから、怒涛のように
過ぎていた月日を振り返ると、なぜ「麻」にこだわっているか?という質問に改めて
応えなければならないだろう。

 工業原料や生活用品やエネルギーを石油から植物へにしていきたいという個人的な
チャレンジ精神は、さておき、次の4つの観点で麻がこの時代にとって必要なもので
あると考えている。

<麻の必要性>
 
1)日本の文化を次世代に伝えていくため

 稲作がはじまる前、縄文時代から衣服や縄、紐などの生活素材として麻は使われてきました。今でも麻は、下駄の鼻緒、畳糸、魚網、和紙、漆喰壁、茅葺屋根、弓弦、お盆行事、神社の鈴縄、七味唐辛子などに使われ、日本の文化を支えてきた素材である。

 この生活文化は、第二次世界大戦後に化学繊維の普及と生活様式の西洋化によって、麻が身近な生活素材でなくなって、すでに50年という半世紀が過ぎている。しかし、2007年現在、70〜80代の方が1万年以上続いてきた生活文化を知る最後の世代がいる。戦後、便利、効率という価値によって失われた「物を大切にする心、祖先を大切にする心」を学び、次世代に伝えるのは、現世代の大きな使命の一つである。

 特に地域の子どもや青少年に生活文化を体験することは、世代間交流を通じて、社会への適応力をつけ、郷土愛や文化への理解を育み、人間教育の場として有効である。日本の文化を次世代に伝えるためには、今がそれを支える素材のよさとその利用方法を 学べるおそらく最後の機会であろう。


2)健康長寿を実現するため

 日本人は、飽食なのに栄養失調状態にあります。エネルギーの元である脂質、糖質、タンパク質の3大栄養素はとりすぎで、代謝栄養素であるミネラル、ビタミン、食物繊維が不足しているのが現状である。(※)

 特に問題と指摘されている脂質の飽和脂肪酸やリノール酸の増加、カルシウム、鉄、銅、亜鉛の不足、食物繊維の不足に対して、麻の実は、これらの問題をほとんど解決できる栄養素をもつ稀有な食材である。元来、麻の実は、漢方薬として整腸作用と血糖降下作用のあるものとして知られ、中国の長寿研究で著名な広西巴馬長寿研究所によると麻の実を常用食として食べると動脈硬化を防ぎ、長生きにつながると報告されています。

 多くの人が健康で明るい人生を歩み続けることが、高齢者医療費の増加を抑え、国の財政や保険制度の破綻を回避することにつながる。地域ぐるみで麻の実を常用食にすることは、美味しさや調理法の簡便さの観点からも実践しやすく、健康長寿を実現する方法として有効である。
※:「国民栄養の現状2002版」第一出版より


3)持続可能な社会をつくるため

 従来の経済社会が化石燃料、鉱物、ウランなどの再生不可能な資源利用と海外資源依存型にあるのに対して、21世紀の経済社会では、木や草や有機系廃棄物などのバイオマス(生物資源)を中心とした資源循環利用と地域資源活用型へ移行していくことが望まれています。2002年に政府で閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」によって、その利用が期待されています。

 環境意識の高い欧州やカナダでは、麻の繊維を自動車内装材や住宅用断熱材など、種子を食品や化粧品などの様々な製品に応用され、古くて新しい環境素材として注目されています。麻は、石油由来製品が普及する以前は、日本古来から使われてきたバイオマスであり、 地域で栽培、加工、消費、再び土に戻して廃棄するという循環型モデルに相応しい素材である。

 例えば、三重大学船岡教授によって開発された植物からリグノフェノールを取り出す技術(※)を使えば、様々な生活用品になり、回収されて何度でも別な製品に生まれ変わることができる。研究では木本植物よりも草本植物の方が変換効率と低エネルギー性に優れており、草木性で生産力のある麻の活用は非常に有望である。

※ 植物は、主にセルロースとリグニンという成分で構成され、今まではリグニンの利用技術が確立されていなかったが、この研究によって、石油化学産業のような植物分子素材産業が生まれる可能性がでてきた。現在、産官学連携で実用化に向けて急ピッチに開発が進んでいる。


4)農業の再生のため

 麻は、無農薬で化学肥料もほとんどいらずに3ヶ月で3メートルに生育する作物である。昔から麻作のあとは、蕎麦か大根などを植える。麻を栽培した後は、土がふかふかになり、アロレパシー効果によって雑草をはびこらせないので、土壌改良に適した輪作作物である。

 種子は、食品や化粧品、繊維は、紙、オガラは建材などに多用途に利用できる特徴がある。麻は、生産現場の1次産業と加工業の2次産業、サービス業の3次産業をつなげて、農業を6次産業化できる素材である。生産からサービスまでの一貫体制によって、付加価値の高い製品とサービスを生み出し、農業再生の新しいモデルになることできる。


●感想をお待ちしております!

 私の考えている必要性は、こんなものだが、多くの分野、切り口のある麻という植物の必要性は、様々な角度から述べることができるであろう。ヘンプの認知度がまだまだであるため、有名人や知識人から文化、健康、環境、農業の面ではあまり語られていないのが残念なところである。

 2006年に市販の「ヘンプ読本」(築地書館)が出版できたことが私にとっての「ヘンプ」のスタートラインにたったところいう認識をしている。スタートラインに立つまでの準備期間が長かったような気もしますが、これから飛躍していきたいと思っていますので、ヘンプや麻の必要性に関する感想を送っていただければ幸いです。

以上






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